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演奏能力を決める要因とは

上智大学音楽医科学センター長にして、私のかかっている指の病気「フォーカルジストニア」の研究で有名な古屋晋一先生の、とても興味深い講座がありましたので、これについて書きたいと思います。

先生は私と学年が一緒で、ジストニアの磁気治療の実験では大変お世話になりました。ものすごく気さくな方でびっくりするほどイケメンです。音楽のことについて、科学的な視点でいろんなことを研究している方で、大変才能のあるアマチュアピアニストでもあります。

 

古屋先生の音楽医科学研究センターについてはこちら

 

演奏能力を決める要因の約8割は練習の「量以外」です。

≪演奏能力を決める要因≫

1. 練習の質

2. 才能(遺伝子)

3. 恵まれた身体(構造・機能)

4. 早期教育

5. 良い教師

6. 親のサポート

7. 良いテクニック・身体の使い方

8. アガリに負けないメンタル

9. 故障しやすさ

 

練習による効果は、

「上手くなる」

「何も変わらない、けど疲れる」

「下手になる」

の3つだということをお話されました。

 

「何も変わらない」のはしょうがないとしても、「下手になる」ことは避けたいですね・・・。

 

いろいろなお話をされた中で共通して言えることは、何も考えずにただひたすら行う反復練習は「意味のない練習」であり、それは上達しないばかりか、疲労や故障につながるということです。

 

日頃のレッスンでもやっていることですが、音だけでなく身体に意識を向けたり、ミスをした原因を分析したりするなど、みずから認識し考えることが必要であるとおっしゃりました。

さらに、疲れているときは無理をせず、しっかりと休息をとることも重要とのこと。充分な休息は、疲労回復だけでなく、記憶の定着にも非常に効果があるからです。

 

最後のまとめでは、大事な練習方法を述べていました。

① 弾く前に、問題点を分析し、必要な練習を選んでから練習する方法。

② ゴールを決めてから練習する方法。

 

私は、ジストニアという病気になって初めて、「練習量に頼らない練習」の大切さを知りました。古屋先生もピアノ練習によって身体を痛めた方であり、音楽をする人たちが健やかに楽器を演奏することを心から願うからこそ、このような講座を、科学的な視点で行ってくださっています。

だから、今の時代にピアノを習ってる生徒さんは、そのことを知ることができる分、幸せです。でも一生懸命にこういうことを伝えようとしても、なぜか練習量に頼るようになってしまう生徒さんが多く、悩みます。

 

大学の時の友達で、素晴らしいピアニストになっている人に話を聞いて驚くのは、「身になる練習(量に頼らない練習)を始めたのは、学校を卒業してからだよ。」というセリフをよく聞くことです。

私のように病気をしたり、本気で生計を立てたい、上手になりたいと心底願うようにならないと、質の良い練習方法に気づくことはできないのだろうか・・・といつも思います。

 

これは、ピアノに限らず資格取得や外国語の勉強、その他何をするときも共通することです。要するに脳の使い方です。

もしこのことに気づくことができたら、いろんなことが時間をかけずに、疲れずにできるようになります。そんなことに、ピアノを通じていずれ気づいてもらえたらいいなと、いつも思いながらレッスンしています。


古屋先生プロフィール

古屋晋一 博士(医学)

現職: 上智大学 理工学部 情報理工学科 准教授 / 音楽医科学研究センター センター長

ハノーファー音楽演劇大学 音楽生理学・音楽家医学研究所 客員教授

研究内容:ピアノ演奏の巧みさと不自由さを解明・支援する

趣味:サッカー,お笑い鑑賞,旅行,甘味

将来の夢: “ピアノを愛する全ての人に貢献できる研究・教育基盤を国内外に確立し,誰もが笑顔で音楽を奏でられる世の中を創るために,研究者として一生を捧げること”

 

 

主要なコンクール入賞歴と演奏曲目

2004年 KOBE国際音楽コンクール 入賞: Scriabin "Fantasie" 

2002年 PIARAピアノ演奏グレード 1級取得: Scriabin: Sonata No.2, Chopin: Fantasy, Beethoven: Waldstein

2001年 日本クラシック音楽コンクール 全国大会入選: Liszt "Dante  Sonata" (予選 Chopin "Fantasy")

2000年 和歌山音楽コンクール 入賞: Chopin "Etude Op.25-5", Rachmaninoff "Etude Tableux Op. 39-5"  ・・・

 

これまでに、成瀬修、中野慶理の各氏に師事

 

ピアノ演奏の身体教育法の学習・指導歴

解剖学・運動学の観点から理にかなった、ピアノ演奏の身体の使い方に関する身体教育法について、日本、アメリカ、ドイツを中心に学ぶ。ハノーファー音大では,ピアノ専攻の学生に対して、身体の諸問題に対するコンサルテーションおよび身体の使い方に関する指導を実施し,演奏に関する技術的な問題の解決,故障の予防・再教育を行う。現在,健常なピアニストの故障予防や力み問題の解決,各種疾患を患ったピアニストの身体の使い方の再教育やコンサルテーションを行う.

 

2015年 Andover Educators認定講師

2004年 "Freeing the caged bird (ピアニストのための身体の使い方の再教育プログラム)" 修了認定資格をBarbara Lister-Sink教授より授与(アメリカ、ノースカロライナ)

2004年 Body Mappingに基づくピアノ演奏法について、Barbara Conable、Thomas Mark, Anita Kingの各氏より学ぶ(アメリカ、オレゴン)

2001年~ アレクサンダーテクニークを小野ひとみ氏に師事

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