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「できる」という体験が必要な理由

脳科学的に、何か一つの能力が高まると、関係しないほかの部分の能力が伸びていく「汎化」という特徴があります。

ある能力の高まりにつれて、その能力と関連する神経細胞ネットワークが強化されるというものです。

 

できるという自信(見通し)ができると、急に学習スピードが上がることがあります。

 

指導する中で、歌にとても苦手意識がある子がいました。最初は、それを克服しようとしてたくさん歌わせたりしていましたが、逆にそれがその子の苦手意識を増やしているかもしれないと感じたため、しばらく歌には触れないでいました。

リズムうちやピアノ演奏、楽譜のお勉強などをしばらく続け、だいぶ自信がついてきたある日、試しに歌わせてみたところ、以前とは比べ物にならないくらい、とても上手に歌えるようになっていたのです。

 

また、ある教材が難しくなってきたと感じていた生徒さん、そのまま進ませようとせずに思い切って、楽々できるような教材に切り替えました。

そうして、「できるできる~。簡単~。」という生徒さんの言葉をききながらレッスンを進めました。

すると、それまでは苦手としていた音読みが急にできるようになったり、前よりもリズムが取れるようになってきたばかりか、ぐんと集中力も増したのです。

 

一方で、自分の力で対処できない事態を強く経験すると、本来ならできることでも、新しい事態で、うまく対処できなくなる(しようとしなくなる)現象があります。

 

これを心理学で「学習性無力感」と言います。

 

私の息子ですが、幼稚園の鉄棒で、逆上がりができました。しかし、公園の鉄棒(幼稚園より高さが高い)で練習してできない体験をすると、今までできていた幼稚園の鉄棒でもできなくなってしまいました(逆の過程を踏んで、何とかもとに戻りましたが・・・)。

 

また、ある教材に煮詰まってきた生徒さんに、なんとかそれを理解させようと続けさせた場合、今まで読めていた音符が読めなくなったり、リズムもわからなくなったりすることがあります。

これに気づかずそのまま進めていくと、「もうピアノできない、難しい、イヤ」となってしまうわけです。

(小学校のうちにやめてしまう典型的な例です(^^;))

 

 こうして考えると、苦手なことばかりに注視するよりも、その子の「強み」を伸ばすこと、まず「できた」という体験をさせるというアプローチが、結果として、その他の苦手な能力の底上げに効果的であると言えそうです。

 

 レッスンの中で、簡単なことをさせすぎていると感じたり、もっと苦手な部分を指導してほしいと考えたりする親御さんもいらっしゃるかもしれません。が、私が今まで培った知識と経験を総動員させた結果、この指導がある、ということをご理解頂けたらうれしいです。

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