癖になっている動作に、隠されている動作を足すと、癖が消える・・・。
まず、何も考えずに下記の動作をしてみてください。(レッスン風景は、長い前置きを経て最後にあります(^_^;))
手の平を上に向けるように回す。
今度は手の平を下になるように回す。
これを6回繰り返す。(目をつぶって)
自分自身を観察すると、手の平が上に返された時に指が曲がり、手の平を下に返した時には指が少し伸びることに気づくかもしれません。
この動きが起こる理由は、私たちがものを取ろうとする時は、手の平を下に向けて「習慣的に」指を伸ばすからです。いわゆる『癖』ですね。
そして、物を掴み口に持っていって食べる時は、手のひらは上を向き、指は曲がっていることが多いです。(これも癖です。)
だから手の平の向きを上下にする時に指を曲げたり伸ばしたりする動作には、物を掴んで食べる時の『癖」が混在しているということが言えます。
で、ここから少し面白いことをやります。
人差し指と中指の間で鉛筆を持って(タバコを持つように)、同じように手の平を上下に返すと、今度は指は少し伸び気味になって、指が曲がる動きは起こらないでしょう。
『癖」が消えたのです。
フェルデンクライスはこの例で、下記の2つのことが言いたかったようです。
- 単純な動作にも自分では気づいていない複数の動作が存在しているということ(手のひらを上下に返すという単純な動作にも、ものを掴んで食べるという関係ない動作の癖が出ているということです)
- 自分で気づいていなかった隠された動作(タバコを指に挟む)を意識的にやると、余計な動作が消える。(手のひらを上下に返すときには、いろんな動作が混じっているけれども、その、『自分では認識していない隠された動作』を足すと、「癖」が消えて、動きがシンプルになるということです)
おもしろいな〜!と思いました。
そこで、私たちはピアノ演奏をするとき、自分で思っているよりも、「指を曲げる」という強力な『癖』が存在するんじゃないか?癖を開放して、動きをシンプルにすると、動きやすくなるのでは?
と思い、試しに上述したように、人差し指と中指に小さい消しゴムを挟んでピアノを弾いてみました。
あれ?なんだか指が動きやすい・・・。
私はジストニアという指の病気を持っていますが、普段は弾けなくなるパッセージも簡単に弾けてしまい驚きました。
なぜでしょう。
もしかしたら、「ピアノを弾く」動作の中にも、「タバコを持つ」という隠された動きが存在していて、それを足したことによって、「指を曲げる」という癖から指が開放されたのかもしれません。
癖というのは一つの緊張です。
緊張から開放されれば動きやすくなります。
という長い前置きをした後で、これを早速生徒さんにも試してみました。
すると、8割の生徒さんが、
「なんか弾きやすい」
「指が開く感じがする」
「力が入る感じがする」
と、良い感覚があったようでした。
実際、見た目にも動きがシンプルになり、余計な力が減っていました。
残り2割の生徒さんは、自身の音の間違いに気持ちが行ってしまい、「音が間違ったから弾きにくい」という評価でした。残念。(こういうことからも、間違いを指摘する教育法は良くないな〜と思います。間違いが気になって大切な他のことに気づかなくなるからです。)