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オペラント条件付けとピアノ練習

オペラント条件づけとは、アメリカの心理学者バラス・スキナー氏が考案した条件づけの方法のひとつです。今日は、その方法とお子さんの練習のさせ方を関連づけて書いてみます。

 

まずは「オペラント条件付け」について簡単に説明します。

 

心理学者スキナー氏はハト用の箱に仕掛けをしました。

スイッチを押すことでエサが出てくるというものです。

 

空腹なハトを中に入れて様子を観察すると

「スイッチを押したらエサが出てきた」

という経験を何度もすることで、ハトのスイッチを押す頻度が増えることを発見しました。

 

スイッチを押すとエサが出てくることを学習したことで、ハトが自発的にスイッチを押すようになったのです。

 

このように動物が、ある特定の行動を起こす頻度を増す訓練過程を「オペラント条件づけ」と言います。

 

このオペラント条件付けを、アウェアネス介助論の著書で医師の澤口氏が面白い記事を書いていましたので、引用し、ピアノの練習やレッスンに関連づけて書いていきます。

 

澤口氏は犬のアル君に対して、オペラント条件付けを利用して「ベルを鳴らすとお菓子がもらえる」ということを学習させました。

以下記事と追記です。(記事は■、追記は→で書きました)

■「最初はアル君はベルを怖がりました」ということがとても大切です。

 

→まずピアノを鳴らすこと自体に不安を覚えるお子さんがいます。シンプルにピアノという未知の楽器が怖い場合と、何か間違えるかもしれない不安などあります。

 

■ここを超えなければ、ベルを鳴らすという行動(オペラント)は実行されません。

そのためにいろいろなことをしました。

ベルの上で私(澤口氏)の手を出して「お手」をさせ、アル君が「お手」をした瞬間、私が手を引っ込めてアル君の手がベルを押すようにしてみました。

ところがアル君は警戒して私が手を差し出している横に手を出しました。(ベルがないところで「お手」をした)

ベルをアル君の手に触れさせたこともあります。

露骨に嫌がりました。金属の冷たさや反射が嫌なようでした。

 

→ピアノに対する警戒を解くように工夫する必要があるということです。聴覚過敏を持っているお子さんも多く、音が鳴るものに警戒している場合もあります。

 

■そこでアル君の好きなものと組み合わせてみました。

アル君はお菓子が大好きです。

このお菓子をベルの中に隠すと、ベルをひっくり返してお菓子を食べました。

お菓子の魅力はベルに対する恐怖を消しさりました。

こうしてベルに対する恐怖がなくなると、ベルに触れるようになりました。お菓子が隠れているかもしれないからね。

 

→ピアノを弾くことへの恐怖心を取り去る方法については、いまだに確証というものは得ていません。

が、レッスンにおいてはまず私のことを信頼してくれるようになり、かつ何か間違っても誰もそれについて評価するようなことがない、ということを本人が理解した時に弾いてくれるようになることが多いです。

 

■トレーナーのやってほしいことをやらせようと「嫌がること」をするのは、効果がありません。

オペラントを体験する(ベルを鳴らす)ことを拒否する段階では、オペラント条件付けはできません。

 

→先生や親御さんがお子さんに、「嫌がること」をしてやらせようとするのは効果がないということです。

例えば怒ってみたり、弾かなければおもちゃで遊べないよと言ったり、大好きな何か食べ物が食べられないよ、弾かないならピアノを辞めさせるよ、などなど。

そして弾くこと自体を拒否する段階では、ここでいう条件付けは使えません。

 

■対象の動物が「興味のあること」をオペラントにするのが良いです。

自分に利益のあること、興味のあることはほっといてもやります。

もし、自分の利益に直接結びつかないこと、今は興味のないことをオペラントにしたければ、そのことが自分の利益になることを体験させることです。今回は「お菓子をベルの中に隠す」でした。

 

→親御さんで時々誤った認識をされている方がいらっしゃいます。

ピアノの練習というのは特に習い始めて数年間くらいの子供にとっては、利益になることでも興味のあることでもありません。

まれに、楽しいと勝手に練習してくれる子もいますが「奇跡」と呼ぶのがふさわしいくらい珍しいことです。

「この子は練習しないから興味がないようだ、ピアノはやめたほうが良い」と解釈する親御さんがいらっしゃるのですが大間違いです。

そのように考えるのであれば、最初からやらないでくださいと言いたいですね。

多くの子供にとってすぐには利益に結びつかない、興味のないピアノをやらせたければ、そのことが自分の利益になることを体験させる必要があります。

 

■学習の根本的な基礎は「本人がやりたいことを続けて習熟すること」です。

他人の言うとおりにすることではありません。

本人の「やりたい」という衝動がないことは学習させられません。

しかし『やる気を報酬によって刺激する』ことはできます。

もしもベルに電気を流していたら(つまりオペラントが不快なものなら)、いくらお菓子で釣っても、まともな条件付け学習は不可能です。

 

→ピアノはとても難しい楽器です。

音楽自体が好きであっても、それをピアノで弾く作業というのは全く別、数学と秩序の世界そのものです。

すぐに指が動き、弾きたいものが弾けるのであれば、もちろん楽しくて練習するでしょう。

でも例えば、自分がメリーさんの羊を弾いているはずなのに、ゆっくりすぎて何を弾いているのかもわからないような状態だったり。

どこを押せばどんな音が返ってくるのかも理解できていない状態だったり。

習熟がもう少し上がっても本当に少しずつしか上達しない難しい楽器です。練習なんてやりたくありません!

だからまず、先生や親御さんの協力なしに手放しに「本人がやりたいと思う」ことは無理だと思ってください。(もちろん例外もありますが、そんなやりやすいお子さんには心から感謝してください!)

しかし報酬によって、「やる気を刺激する」ことはできます。

叱責やその子の好きなものをなくしていくといった、不快なもので学習させようとしたら、ピアノ練習の習慣はつきません。

 

※以下の■の文は緻密なプロセスがあったことを示しているだけですので、サッと読んでください。

■さらに食べ物を載せてから「待て」をさせて、ベルを鳴らしてその音を聞かせてから「よし」というのです。

すると、アル君の中で、「待て」→「ベルが鳴る」→「よし」→「食べてうれしい」という連鎖ができます。

これを数回続けます。

「ベルの音のあとには『よし』が来る」という体験を重ねます。

かならずベルを鳴らしたには『よし』と言います。

一度でも変えるとアル君は疑念を持ち、学習が阻害されます。

このようにして、「ベルの音は『よし』と同じ意味を持つ」と理解できるようにします。

「アル君がベルを押してお菓子を要求する」という短い言葉で表現される事象にもたくさんのプロセスが含まれています。

その一つ一つのプロセスを理解して提示できることで、アル君の学習を支援できます。

 

→アル君の行動をよく理解することで学習支援ができます。

ピアノもそのお子さんの行動の理解なしには指導できません。

なぜ椅子に座っていられないのか、姿勢が悪くなるのか、乱暴に弾くのか、指番号を守れないのか、楽譜を見ないのか、声をかけても弾かないのか、などなど。

 

■人間の子供の学習も同様です。

先生や親は自分の子供の時の体験を思い出して、それをもとにして子供の学習を支援します。

単に有名な教育者の言葉をまねしても支援できません。

自分で自分のしていることを理解している人が、ほかの人の学習を支援できます。

 

→例え有名なピアニストの本を読んで真似しても、動画などをみて真似してみても応用はまずできません。

弾くという意味でも教えるという意味でもです。

しかし自分自身をよく理解している人であれば、真の意味で他の人の学習を支援できます。

 

自分を理解するためのメソッドは、世界中にさまざまなものがありますが、私が知りうる限りでは「フェルデンクライスメソッド」です。

もしこれを私がやっていなければ、適切な指導は行えていないと思います。

あの人はこんなことを言っている、この人はこんなことを言っている、どれが正しいのか。。。と悩み続けていたでしょう。

 

子供から大人まで全ての方にやってほしいメソッドです。

特にお子さんを育てる親御さんにはぜひやってほしいです。

 

自分のことがわかると他の人のことがわかるようになります。

つまり子供の行動についても理解できるようになるのです。

従って教育について悩むことが減っていきます。

 

フェルデンクライスメソッドについて詳しく知りたい方は、レッスン中にお声がけいただくか、お問い合わせフォームよりメッセージをお願いします。

指導にあたって

当時、講師かなざわの1歳の息子がピアノで楽しそうに遊ぶ姿に感激しました。これは、その当時のかなざわにとってピアノは『楽しい』ものではなくなっていたからです。

 

人は本来、ピアノが楽しくないとか苦手だとは思いません。しかし、ピアノが苦手で楽しくないと感じ、結局は諦めてしまう人は多いのが現実です。それを変えたいという思いが、ピアノ教室を立ち上げる原点となりました。

 

お子様にピアノを習わせたい親御さんや、自分自身がピアノを学びたいと思っている大人の方々は、レッスンに何を期待されていますか?

私がピアノを習っていた当時は「上手い」ことが全てでした。

それは音大に入っても変わりませんでした。

 

しかし社会に出て「上手い」人に価値があるというわけではない、ということがわかりました。

それはとてもショッキングなことでした。

そこにたどり着けば上手くいくものだと思って努力していたからです。

これは勉強,就職に対する考え方と同じだと思います。

 

『上手い』演奏は目指しません。

ピアノレッスンそして練習というプロセスを通して『質の良い学び方』を学びます。

「結果」は、『学んだ』後に勝手についてきます。

練習、学びの質が良ければ自然と「上手い」演奏になるかもしれません。

 

 私が準備できるのは、まずは何度でも間違えられる、どのような弾き方でも批判を受けない、つまり「安全だ」と感じる環境を作り生徒さんが本来の力を出せるようお手伝いをすることです。

音楽は非常に歴史が深く人間の叡智が宿っています。

それを演奏する楽しさというのは格別です。

しかし、やり方を誤ると体を傷つけます。

 

私自身が、小学校高学年の頃から体の痛みに苦しめられることになりました。

30代を過ぎてからは治療法の確立されていないフォーカルジストニアという脳神経の難病を発症しています。

痛みや病気の発生はその取り組み方にありました。

 

努力や根性、厳しい訓練がもたらす弊害を、ジストニアをきっかけに始めたメソッド「フェルデンクライス」から学びました。

フェルデンクライスは脳の可塑性を利用した科学的なメソッドです。

動きを通して脳を活性化します。

 

根性論でなく、何か有名な教育書に書かれているからでもなく、ただ脳がどのようにしたら活性化するのか、よりよく学べるのか、それをフェルデンクライスは体験をもとに気づかせてくれます。

 

私の指導の源はそこにあります。

指導とは、その演奏を成しとげるための『新しい選択肢』を提示するものです。

『理想』はおしつけません。

一人ひとりに寄り添い、 その人らしい演奏を尊重します。

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年度替わりの際に、進学等により多少の空きが出ることがありますが、ほぼ定員いっぱいで、生徒さんを増やすことがなかなかできない状況です。

 

従来の精神論に頼らない科学的な根拠に基づいた指導法をもっと広げ、本質的な意味で生徒さんの人生の質をあげることに貢献していきたいと考えています。

 

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