「俺の人生、終わった」。RADWIMPS(バンド)のドラマー山口氏を襲った病。それは講師かなざわと同じ「フォーカルジストニア」です。最近になり声でドラムをするという新たな音楽表現を探索されているそう。その研究についてテレビでたくさん取り上げられていたので書きます。
まずは実は私がRADWIMPSというバンドをあまりよく知らなかったのでその動画をいくつか挙げます。
Amazonプライムビデオで観ることができる「すずめの戸締り」こちらのオープニング曲がRADWIMPS。
生徒さんに弾きたいとリクエストされて一緒に練習したことがあります。綺麗な曲です。
こちらも生徒さんから弾きたいとリクエストのあった曲。
最近では中学校などの卒業式ソングとしても人気のある「正解」。
今回のブログを書くにあたりいくつか聴いていたのですが、ピアノを使うことが多いバンドで綺麗めだったり歌い上げるゆっくりな曲が多いので安心して聴いていられる音楽を作るのだなと感じました。
そのバンドでドラムを担当していた山口氏、彼は2009年にジストニアの症状を発症しました。
その時のことをこのように言っています。
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当時はただただ謎の現象で、とにかく練習すること以外に何も方法が思いつきませんでした。結局、医療機関に診察してもらったのは2014年なんですけど、それまでの5年間はそもそも病気っていう疑いもなくて。自分の中に住んでいる悪魔か何かが、予期してないところで突然身体が動かなくしてしまう、本当にそんな感じだったんです。
そういうことがたびたび起こるようになって、“これは一体何なんだろう”っていう恐怖心と、自分の音楽人生を奪われてしまうような、ものすごい絶望感がありました。とはいえ、当然、今の状況をどうにかしたいっていう気持ちはあって、また、バンド・メンバーも僕をサポートしたいって向き合ってくれて、何とか5年間くらいは、RADWIMPSのドラマーとして活動を続けることはできたんですけど……LIVE中に突然再発したり、徐々にどんどん悪くなるみたいな感じがあって。でも、どう対処していいかはわからなくて。1つフェーズが変わったのは、2014年に氣志團の白鳥雪之丞さんが、バンドを無期限活動休止されて、それは職業性ジストニアというものが原因であるっていうニュースをたまたま知ったことでした。
調べてみたら、思い当たることが多くて、“もしかしたら僕はこれなのかな”って、ここで初めて気づくんです。それで神経内科に行くんですけど……そこで言われたことが、「あなたは職業性のミュージシャンズ・ジストニアです。非常に難しい症状で、基本的に良くならないので、バンド活動を辞めてください」ということでした。「良くなりたいんだったら、まずは演奏活動をストップすることです」と言われて。
正体がわかったっていうちょっとした救いはあるものの、治すのは難しいって言われて、茫然としてしまいました。でも、大好きなバンドをやめられるわけない。とにかくやれることをやるしかないという思いで、2014〜15年にかけて、新しい知識も取り入れながら、病気と向き合っていたんですけど、自分の気持ちとは裏腹にどんどん悪化してしまって、最終的には叩けない状況になってしまいました。それで、バンドを休ませてもらうことにしたんです。
ただその後も、この症状は一体何なのか、どうやったら良くなるのかということへの関心はずっと持っていました。やっぱり活動中だと、切迫感がありすぎて余裕がなかったので、休養することで持てる視点もあるのかなと思いながら病気と向き合ってきたという流れがあって、そこでついに、2020年に藤井先生と出会うことができたんです。
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リズム&ドラムマガジン(Drums)より引用
という流れで現在彼は脳科学・身体科学の視点からドラムを研究する慶應義塾大学 環境情報学部 准教授、藤井進也先生と共に、その研究を行っています。
それを取り上げているのが下の動画です。
ジストニアはすごく謎の多い病気で、研究していくと神経系の神秘、人間の神秘まで垣間見えるようです。
講師かなざわは2012年にこの病気にかかり、当時はほとんど情報がなかったので1年間くらいの間、山口氏のようにまるで悪魔か何かの呪いで弾けなくなっているのかと思うような感覚でとても苦しんでいました。
ピアノ教室も辞めた方が良いのかなとも思っていました。左手が全くコントロールできない状況になっていたためすごく簡単な手本を弾くこともできなかったのです。導入期の未就学のお子さんでも弾けるようなフレーズが当時の私には弾けなくなっていました。
山口氏は別の方法で演奏をする方に行ってらっしゃいますが、私はやっぱりまた弾けるようになりたかったのです。
リハビリの過程でいろいろな素晴らしい先生に出会いました。
その中で特に衝撃的だったのが東京芸大の講師でチェリストである福富祥子先生のレッスンの中で出会った「フェルデンクライス」です。
動きは筋肉が仕事をするけれどもそこに司令を与えるのは神経系、そこを変化させればまた弾けるようになるかもしれない!
それを信じさせてくれるものがフェルデンクライスにはありました。
そこから10年経過、そして私の現在は完治とはいかないまでも85%くらい良くなったかなと思えるところまで来ました。
特に4、5年前に弾いて左手がうまくいかず右手で弾いていたこの曲が、最近弾いてみたところ右手に肩代わりさせなくても弾けるようになっていました。
これは嬉しい。
中山美穂さんが亡くなったことで思い出して弾いたこの曲。
岩井俊二監督作品のLove LetterよりWinter Song.
4年前くらいに動画にあげた時には、左手が思うように弾けず右手で何とか弾いた部分が多かったのですが、この動画では楽譜通りに指が動きました。動きの質も前より良くなっています。
ピアノ演奏において、実はプロでも自分がなぜそのように動けているのか知らない方はたくさんいらっしゃいます。
なぜその練習が有効なのか、有効でないのか、ピアノの先生の90%くらいがただ自分がそのように経験し、練習してきたから、という理由でそれを伝えています。
だから間違いもたくさんあるし、不適切な癖を授けられてしまうことも。
そして、どのようにしたら脳の力を引き出せるのか、きっとこうだと勝手に信念を持ってやってしまう先生も多いです。ピアノでなくても。
脳科学を基礎としたフェルデンクライスを学ぶと、人生が180度変わったかのような感覚になりました。
辛いものはないのです。ただ楽で気持ちの良い質を追求していくと動きの質が変化します。
そこから毎日、新しい動きの再学習です。
動きの質の向上は人生の質の向上、なぜなら例えば呼吸だって動きです。
赤ちゃんの頃のような何もしなくても深くて体全部が動くような呼吸が大人になってもできたら、それだけで痛みや病気は治ってしまい、いい気分でいられます。
感情の変化にも全て動き(筋肉)が関わっています。
動きを変化させることができれば自分自身を変化させられるのです。
どうしても大好きなフェルデンクライスの話になると盛り上がってしまう。。。
話を戻します。ジストニアという病気は「ただ下手になったように見える」というすごく難解な病気。
ゴルフの宮里藍さんが引退したのも、ジストニアに一因があったそうです。
下手の言い訳をするように聞こえてしまうジストニア。
だから、明確な病気として存在していることを知ってもらうことが必要。
山口氏のこうした活動が世間での認知度を上げてくださり、私も最近は自分の病気についてあまり言わなくなったけれどもやはり言い続ける必要があるなと感じ書きました。
病気になった当時は毎晩のようにジストニアが次の日に良くなっていて弾けた、という夢を見ました。
1年も経つとその症状は私の自己イメージに入り込み、そもそも弾けなかったのではという自信の喪失にも繋がりました。
でも、本当に神経系に効果のあることをやっていけば良くなっていくのです。
これは障がいのある子供にも共通して言えること。
だからフェルデンクライスを通して学んだことをできるだけ多くの人に伝えていきたいと思っています。
初めてピアノを習うお子さんから大人の方。
もっと動きの質を高めて上達したい楽器奏者、歌い手の方。
ご興味のある方はぜひ体験レッスンにいらしてください!
さちの日常
家の庭で育てているブロッコリーをようやく収穫!完全無農薬の美味しいブロッコリーになりました。
レッスン室から外を覗くと、小さな庭にブロッコリーとにんじんを育てております。
日当たりが悪いのと、土が痩せている(前の持ち主はお花を植えていた)ため、発育が遅かったですがこれから土を育てていき、家計に貢献してくれるようになったらいいなと思っています。ブロッコリー、栄養満点だけど高いですよね。
水やりは自閉症の息子が担当。枯れてないのでえらい。
3月くらいになったらブロッコリーの代わりにジャガイモを植える予定です。
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