自己イメージが出来上がる時
講師かなざわです。今回は私が学んでいるフェルデンクライスの著書『フェルデンクライス身体訓練法』からの引用を交えて書きます。以下引用文。
一般的に言って人間は13か14歳くらいになると環境への適応能力を発展させたり改良することをやめてしまう。
この年齢になっても困難だったり不可能だったりする頭脳、情動、身体の活動は永久に習慣的なものの限界を超えたものとなってしまう。
その結果、人間の能力は必要とされるよりもはるかに低いところに制限されたままになる。

このような制限は通常、生理的社会的成長の過程で直面する様々の困難の結果として個人の上に押し付けられるのである。個人が一定の困難を繰り返し体験すると、ものにしにくいと思ったりうまくできなかったりどこか不快だと感じたりする活動はたいてい諦めるものである。
自分で勝手に基準をつくり、例えば「踊りなんかできない」とか「生まれつき人付き合いが悪いのだ」とか「数学は絶対自分には分からない」などという。
このように自分で勝手に定めた見解はすでに諦めてしまった領域だけでなく、それ以外の分野においても成長することを中止させてしまい全人格にも影響を及ぼすことになるだろう。
何かが難しすぎるという感覚は周りに広がってその他の活動にも乗り移るであろう。
自分に欠けている素質や、そのため努力すら試みない事柄が当人にとってどんな重要性があるのかを判断するのは困難なことであるから、気づかずにこうむっている損害たるや計り知れないのである。
『フェルデンクライス身体訓練法』より引用
何か習い事をやめる一つのタイミングとして小学6年を卒業するときがあるようですが、それは上のようなことにより、すでに自分の成長というものに限界を感じている場合に多いと思います。
また、残念ながら同じくこの時期になると親御さんも「ここまでか。」と思ってしまうことが多いようです。
私の自閉症の息子(中学3年)は、合気道、ボルダリング、バイオリン、ギター、水泳、時々歌を習い事でやっていますが、どの習い事もこれからもっと伸びると思っているし、親もそのように信じています。
だから辞めないし、いつでも楽しんでいる。これはある程度の正確な自己イメージを息子の中に形成することができたからだと思っています。
「できない」という自己イメージはものすごく強固であることを、10年以上生徒さんをみてきてひしひしと感じています。フェルデンクライスは、人が持っている能力というものにはほとんど差がないと言っています。
でも人は、例えば指がうまく速く動かせないと感じたらそれが自分、それが限界なのだと思いそのように自己イメージを確立します。
でもフェルデンクライスをきちんとやるとわかりますが、そんなところに限界は本当はないのです。
子供の場合にはまずは自己イメージを低くしてしまうような環境はなるべく作らない事が重要です。新しい事に挑戦しないということではなく、子どもがこれはできないと感じてしまわないような指導者選びと周りの声がけが必要となります。
さちピアノではほかの教室でうまくいかなかったというお子さんや大人の方が楽しく弾いている姿をよく見かけます。それは脳科学をベースにしたメソッド(フェルデンクライス)をレッスンに応用しているから。
『不可能を可能に、可能なことをやさしく、やさしいことを優雅に。』
これを音楽を通して実現していくことを目指しています。
この演奏をしているのは72歳のとき。現在は83歳ですがバリバリ現役のピアニストです。柔らかくしなやかでいながら力強くハリのある演奏。私は若い人が器用に弾いているのをみてもあまり面白さを感じないのですが、年齢を重ねてもなお成熟し続ける、発達し続けている彼女のような人には魅力を感じます。